さよなら、紙の保険証。マイナ保険証への移行で「知っておくべきこと」
こんにちはR2-TMです。紙やプラスチックの健康保険証が段階的に姿を消し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」が新しい標準になろうとしています。「何を準備すればいいの?」「カードがないと病院に行けなくなるの?」といった不安を、今回の上巻ではひとつずつ整理していきます。
従来の健康保険証が原則として使えなくなり、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への移行が本格化しています。この大きな変化を前に、「どうすればいいの?」「本当に大丈夫?」と不安に感じる方も多いでしょう。
このガイド(全2巻)では、マイナ保険証への切り替えに関する疑問をできるだけ分かりやすく解消していきます。上巻では、制度の背景からメリット・デメリット、そして「マイナカードを持っていない人」への対応まで、基本のすべてを丁寧に解説します。
1. なぜ今「紙の保険証とさよなら」するのか?
まず押さえておきたいのは、今回の変更が「思いつきの制度いじり」ではなく、日本全体の医療体制をデジタル化するための大きな流れの一部だということです。政府は「医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を掲げ、アナログ中心だった医療事務や情報管理を、できるだけデジタルへ移行させようとしています。
その一環が、マイナンバーカードと健康保険証の一体化、いわゆる「マイナ保険証」です。従来の保険証は紙やプラスチックカードで発行され、転職や引っ越しのたびに新しいカードを受け取る必要がありました。一方、マイナ保険証では、マイナンバーカードそのものが保険証の役割を兼ねるため、手続きのシンプル化が期待されています。
「保険証が急に使えなくなる」というよりも、「これからはマイナ保険証か資格確認書に役割を引き継いでいく」と考えるとイメージしやすいでしょう。
2. 従来の保険証はいつまで使える?移行スケジュールを整理
「いつから紙の保険証が使えなくなるの?」という質問は、本当に多くの方から聞かれます。ここは誤解しやすいポイントなので、できるだけシンプルに整理しておきましょう。
2-1. 大まかなスケジュールのイメージ
- 2024年12月2日以降:従来の健康保険証は新規発行が終了
- ~2025年12月1日頃まで:すでに手元にある保険証は、有効期限の範囲内で経過措置として利用可能(最大で約1年間)
- 2025年12月2日以降:原則として、現行の健康保険証は使用不可。窓口では「マイナ保険証」または「資格確認書」を提示して受診する
つまり、「2024年12月2日を境に全部無効になる」わけではなく、手元の保険証に印字されている有効期限までは、経過措置として使えるケースが多い、というイメージです。ただし、有効期限は保険者(協会けんぽ、健保組合、市町村国保など)によって異なるため、自分の保険証に書かれている期限を必ず確認しておきましょう。
2-2. 2025年12月2日以降はどうなる?
経過措置の期間が終わる2025年12月2日以降は、原則として従来の健康保険証は使えません。病院や薬局の受付窓口では、次のいずれかで保険資格を確認する運用に変わります。
- マイナンバーカードを使った マイナ保険証
- マイナ保険証を使わない人向けの 資格確認書
「保険証がなくなる=病院に行けなくなる」というわけではないので、ここは安心して大丈夫です。重要なのは、自分はどのパターンで受診することになるのかを早めにイメージしておくことです。
3. マイナ保険証ってそもそも何?従来の保険証との違い
マイナ保険証とは、マイナンバーカードに「健康保険証として利用する」設定を行ったものを指します。見た目が変わるわけではなく、マイナンバーカードのICチップに「どの健康保険に加入しているか」という情報がひも付けられ、医療機関のカードリーダーでそれをオンラインで確認できる仕組みです。
従来の保険証との主な違いは、次のような点にあります。
- オンライン資格確認により、保険資格の情報が自動で確認される
- 特定健診の結果や処方された薬の履歴など、一部の医療情報を共有できる
- 転職や引っ越しの際に、保険証のカード自体を何度も作り直さずに済むケースが増える
4. マイナ保険証の主なメリット3つ+α
4-1. 窓口負担が安くなることがある
マイナ保険証を利用すると、従来の保険証よりも窓口負担がわずかに安くなるケースがあります。3割負担の人であれば、1回あたり数十円単位の違いですが、通院の頻度が高い方ほどトータルでは無視できない差になるかもしれません。
4-2. 医師や薬剤師が必要な情報にアクセスしやすくなる
あなたが同意すれば、過去の特定健診の結果や、これまでに処方されたお薬の情報(電子処方箋)を、医師や薬剤師が確認できるようになります。その結果、次のようなメリットが期待できます。
- 似たような検査を何度も繰り返さずに済む
- 飲み合わせの悪い薬を避けやすくなる
- 過去のデータを踏まえた診断・治療方針を立ててもらいやすい
4-3. 転職や引っ越しのたびに「新しい保険証待ち」が減る
従来の保険証では、転職や引っ越しのたびに新しい保険証が届くまでの間、「保険証がない状態」が発生することがありました。マイナ保険証では、基本的にマイナンバーカード上の情報をオンラインで更新するため、カードそのものを作り直す必要がなく、待ち時間が減ることが期待されています。
4-4. それ以外にもある、意外なメリット
- 高額療養費制度の事前手続きが不要になるケースがあり、大きな医療費を立て替えなくてよくなる
- 災害時や救急搬送時など、本人が状況を説明できない場面で、医療情報の共有に役立つ可能性がある
- マイナポータルから、自分の医療情報の閲覧・管理がしやすくなる
5. デメリット・懸念点も冷静にチェックしておこう
制度の良い面だけでなく、「ちょっと気になるポイント」もきちんと押さえておくことが大切です。主な懸念点は次のとおりです。
5-1. 暗証番号を忘れる・ロックしてしまうリスク
マイナンバーカードを使うには、暗証番号(数字4桁や英数字のパスワード)が必要です。これを忘れてしまったり、何度も間違えてロックしてしまったりすると、そのままではマイナ保険証として利用できません。
- 暗証番号を家族で共有せず、でも安全な形で控えておく
- どうしても覚えられない場合は、役所の窓口で再設定できることを知っておく
5-2. 顔認証付きカードリーダーのトラブル
医療機関に設置された顔認証付きカードリーダーで、認証がうまくいかないケースも報告されています。マスク・メガネ・加齢による顔の変化など、さまざまな要因が影響することがあります。
多くの医療機関では、次のような代替手段が用意されています。
- 暗証番号を入力して本人確認する
- 受付スタッフが、本人の顔とカードの写真を目視で確認する
トラブルが起きても、その場で相談すれば対応してもらえるケースが多いので、必要以上に怖がる必要はありません。
5-3. 情報漏洩への不安
「医療情報がネット上にある」と聞くと、不安を感じる方も多いと思います。国は強固なセキュリティ対策を講じていると説明しており、情報にアクセスできるのは、原則として患者本人の同意を得た医療従事者のみとされています。
それでも不安がある場合は、マイナポータルで「どの医療機関がいつ情報を見たのか」を確認できる仕組みを活用したり、「この病院では情報を見てほしくない」といった設定を見直したりすることもできます。
6. マイナカードがない人・使いたくない人はどうする?「資格確認書」の役割
「マイナンバーカード自体を持っていない」「持っているけれど、どうしてもマイナ保険証として使いたくない」という人も少なくありません。そういった方のために用意されているのが、資格確認書です。
6-1. 資格確認書とは?
資格確認書とは、マイナ保険証を持っていない場合に、従来の健康保険証の代わりとなる証明書です。医療機関や薬局の窓口で提示することで、これまでと同様に保険診療を受けることができます。
- マイナンバーカードを持っていない人
- マイナンバーカードはあるが、保険証利用登録をしていない人
- マイナ保険証の利用登録を解除した人
- 電子証明書の有効期限が切れている人 など
こうした方には、原則として従来の保険証の有効期限内に、資格確認書が無償で交付される予定です。多くの場合、特別な申請をしなくても、保険者側から自動的に送付されます。
6-2. 有効期限と更新
資格確認書の有効期限は、原則として最長1年とされています。有効期限が切れる前に、順次新しい資格確認書が交付される運用が想定されています。
ただし、加入している保険者(協会けんぽ、健康保険組合、市町村国保など)によって、細かな運用が異なる場合があります。疑問があれば、自分の保険証や通知に書かれている問合せ先に確認してみましょう。
6-3. 「保険証がないから病院に行けない」は避けられる
ここが最も重要なポイントですが、マイナ保険証がなくても、資格確認書があることで、これまでどおり保険診療を受けられるようになっています。「切り替えのタイミングで病院にかかれなくなるのでは?」と心配しすぎる必要はありません。
そのうえで、発行や更新の手間を減らしたい・将来的なデジタルサービスも活用したいという方は、早めにマイナ保険証の登録も検討してみる、というスタンスがおすすめです。
7. 準備チェックリスト:今から何をしておけば安心?
ここまで読んで、「結局、自分は何から始めればいいの?」と思われたかもしれません。上巻の締めくくりとして、今からできるシンプルなチェックリストを用意しました。
- 手元の保険証の有効期限を確認する
カードに印字されている期限を見て、「いつまで使えるのか」を把握しましょう。 - マイナンバーカードを持っているかを確認する
まだ持っていない場合は、取得にどの程度時間がかかるかも含めて検討します。 - マイナ保険証として登録済みかをチェック
マイナポータルや医療機関の窓口で、既に登録済みかどうか確認できます。 - 暗証番号を安全に管理する方法を決める
家族と共有しない前提で、自分だけが分かる形で記録しておきましょう。 - 家族と「どの方法で受診するか」を話し合う
高齢の親世代など、家族ごとにベストな選択肢が違う場合もあります。
こうした準備をしておくだけでも、「気付いたら保険証が使えなくなっていた…」という事態をかなり防ぐことができます。
8. マイナ保険証と医療DXの豆知識5選
最後に、話のタネにもなる「マイナ保険証と医療DX」に関する豆知識を5つ紹介します。
- 豆知識1:マイナ保険証の仕組みは、薬局・病院のレセプト(診療報酬明細書)業務の効率化とも密接に関係しています。オンライン資格確認が進むと、事務作業の負担軽減につながると期待されています。
- 豆知識2:マイナ保険証を使わなくても、マイナポータルから自分の薬剤情報や健診結果を確認できるサービスが用意されています。医療機関任せにせず、自分の健康情報を管理する「パーソナル・ヘルス・レコード」の第一歩と言えます。
- 豆知識3:後期高齢者医療制度の加入者については、一定期間、マイナ保険証の有無にかかわらず資格確認書が自動で交付される暫定措置もとられています。高齢者の負担を軽くするための配慮です。
- 豆知識4:マイナ保険証の利用状況や医療情報へのアクセス履歴は、マイナポータルから確認できます。「どの医療機関がいつ自分の情報を見たのか」がログとして残る仕組みは、逆にセキュリティ面の安心材料にもなります。
- 豆知識5:マイナンバーカードを持ち歩くのが不安な場合は、カードを守る専用ケースや、磁気・ICチップ保護機能付きのカードホルダーを活用する人も増えています。私も、普段使いしやすいカードケースやミニ財布などを楽天ROOMで紹介しています。
カードを毎日持ち歩く前提になるからこそ、自分の生活スタイルに合ったカードケースや収納グッズを用意しておくのも、立派な「マイナ保険証対策」のひとつです。
9. 関連記事や公式情報もあわせてチェック
マイナ保険証への移行は、医療DX全体の流れの一部です。スマホやパソコンでできる行政手続きもこれからどんどん増えていきます。
例えば、今後は「マイナポータル」や「電子申請」を上手に使いこなすことも重要になってきます。別記事として、
といったテーマの記事と組み合わせて読んでいただくと、より全体像が見えやすくなるはずです。
また、制度の最新情報や詳細については、必ず公式情報も確認するようにしましょう。
10. 上巻のまとめ:不安の正体を知れば「今やること」が見えてくる
ここまで、マイナ保険証への移行の背景、従来の保険証がいつまで使えるのか、マイナ保険証のメリット・デメリット、そして資格確認書の役割について見てきました。
ポイントを改めて整理すると、次のようになります。
- 従来の保険証は、経過措置を経て、2025年12月2日以降は原則使えなくなる
- マイナ保険証には、窓口負担軽減や医療の質向上など、いくつかのメリットがある
- 一方で、暗証番号や機器トラブル、情報管理への不安といった懸念点も存在する
- マイナ保険証を使わない人のために、資格確認書という受け皿が用意されている
- 「病院に行けなくなる」のではなく、「どの方法で資格を証明するか」が変わるだけ
不安の多くは、「よく分からない」「いつ、何が変わるのかが見えない」ことから生まれます。制度の大枠とスケジュールを押さえ、「自分と家族はどのパターンで準備するのが一番ラクか?」を考えていけば、必要以上に怖がる必要はありません。
下巻では、いよいよ具体的な登録手順に入っていきます。特に、
- スマホやiPhoneでマイナ保険証の登録をする方法
- マイナポータルや各種アプリの使い方
- 高齢の家族と一緒に準備するときのポイント
といった、実践的な内容を中心に解説していく予定です。
「とりあえず上巻で全体像は分かった」という方は、ぜひこの記事をブックマークして、下巻の公開もお待ちいただければうれしいです。
※本記事の内容は、執筆時点の公表情報に基づいて作成しています。制度や運用は今後変更される可能性があります。最新の情報や個別の取扱いについては、加入している保険者や各自治体、厚生労働省・デジタル庁などの公式情報を必ずご確認ください。

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